絵本「おまえ うまそうだな」

そらは 毎週1冊ずつ
幼稚園から絵本を借りてくる

ちょっと前までは 月曜のお迎えを15分早く行って
そらといっしょに本を選んでいたのに
いまは ひとりで選んでくる

久しぶりにお迎えに行ったら
満面の笑顔でくつをはいて出てきたけれど
手に絵本の入った袋をもっていない

「そら 絵本の袋は?」というと
たいへんなものを忘れてしまった!というような顔をして
あわてて取りにかけていった

家に帰ってから
「きょうは この本だよ。読んで。」と
わたしのひざに乗ってくるので
見たら 「おまえ うまそうだな」じゃないですか~!

この本 わたし 待ってたのよ~
映画は見そこなっちゃったから
きてくれたのね~わたしのとこへ~♪

ウキウキしながら 読み始めたところへ
娘も ここちゃんをつれて帰ってきた

ガオ~っ!という恐竜の絵をちらっと見て
「あれ またこわそうな本かりてきたね~」 と娘

「おまえ うまそうだな だよ」と言うと
ヘエ~っと 娘もうれしそう

ところが 
読み進んでいくと・・・

目がうるうるしてきて・・・

のどがつまって・・・

涙声になってきたので

ひざのうえで しんけんに見ていたそらも
微妙な表情

なんといったらいいのかわからないよう

たのしかったと言ったらいいのか
こわかったねえと言ったらいいのか
すごかったといえばいいのか

なにしろ ばあばは
泣いているではないか

いつものように
「もう1回読んで」と言っていいものか・・
といった 困ったような顔

途中から聞いていた娘は
「せつない話だねえ」 と一言

そら
せつない って わかるかなぁ

にんげんの
あいじょうの
だいごみだよ

ティラノサウルスが最後に食べた赤い実の味を
そらもいつか きっとわかる日がくるよ


その日の帰りに 
そらが玄関に私を追いかけてきて
私の手のひらに顔をうずめて
それから私のほっぺたに
自分のほっぺたをくっつけてきた

そらだって ばあばが帰る時
いつも せつないよ って
そんな目をして 私をじっと見た

言葉では言えないけれど
こどもも みんな
せつなさを知ってる って
ばあばは わかったよ


こどもは 愛をいっぱいもってる!





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久しぶりにそらに会ったら
また急に成長していた

満面の笑顔でスキンシップ♪
それは変わらないけれど

でもすぐにてれて 
それをごまかすように 他のものへ
私の気をそらせようとする

それに この間までは 
「寝ない・・・ねむくない・・・」と
必死に眠気と闘っていたのが

きょうは きげんよくいっしょに遊んでいたのに 
いきなり立ち上がって
窓の上の時計を見ながら

「ばあば そらは眠くなったから
 ちょっと寝るね

 大きい針が一番上にいったら起きるから
 ばあばひとりであそんでてね
 あ~たんが帰ってきたら 二人で遊んでね

 あ 針がまた上に行っちゃった
 起きれるかな
 ばあば そらは大きい針が1から2のところで起きるからね
 ひとりで遊んでてね・・・」

と言いつつ 
さっさと妹のここちゃんが眠っているふとんのとなりに 
コロンと横になっている・・・

「本でも 読みましょうか」と聞いてみたら
「読んで下さい」というので
近寄って寄り添うと タタミの上・・・

タオルケットを出して掛けると
「あったか~い(๑❛ᴗ❛๑)」と 喜ぶのに

「おふとんを敷こうよ」と言うと

「そらは おふとんはいらないよ タタミでいいの」と言う

だまって たたんだ毛布を敷いてやったら

「あ~ やわらか~い きもちいい~」
と しあわせそう

本を抱えて そばに横たわると
あったか~いと言って 
身体を丸めて寄せてくる


そら 「ばあばは寝ちゃだめだよ 起きててよ」
 
私  「わかったよ~ ばあばはそらに会えてうれしいよ」

そら 「そらも うれしい」

私  「そらに会えなくて さびしかったよ~」

そら 「そらが 愛してあげるよ」


(え? いま アイシテアゲルって言った?・・・うるっ)


私  「うれしいなぁ
    ばあばは毎日 そらに会いたいなぁって思ってるよ」

そら 「そうなのか~
    でも ばあばは トモおじちゃんがいるから大丈夫だよ」

私  「でも トモおじちゃんは遊んでくれないもん」

そら 「そうか~遊んでくれないか~  
    そらがいっぱいお話ししてあげる
    そらが愛してあげるよ・・・」


本を読み始めて 気づいたら もう
長いまつ毛を しっかりとじて
すやすやとかわいい寝息をたてている・・・


そら・・・

もう ばあばはしっかり愛されているよ


ありがとうね






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1週間の旅が始まったばかりの頃から
「そらに会いたい中毒」症状の私の気持ちを見透かしたように
ゆうべ 帰宅したばかりの私に 娘からのメール

「明日 幼稚園に そらをお迎えに行ってくれない?」

この頃また 赤ちゃん返りで
幼稚園に行きたがらず グズグズする・・と
娘の調子が少し沈んでいる

長い長い夏休みの後だもの
無理もないよね・・・

すぐに了解メールを出して
きょうはいそいそと早めにお迎え

娘が産前産後の頃は
毎日お迎えだったのが すごく久しぶりな感じemoji

「そらのばあば」と書いた身分証明の紙も 
ちゃんと首からつるしてきたし・・・

待つこと しばし・・・

ようやく いっせいに飛び出してきた子どもたちの中から 
そらをさがす・・・みつからない・・・

すると その中から
いったん階段に並んですわるきまりをやぶって
いきなりこちらにかけてくる子どもがいる!
 
「さみしかったよ~!」
 
と 叫びながら 
そらが両手をひろげて 
しゃがんだ わたしの胸に飛び込んできた!

ばあばもさみしかったよ~
会いたかったよ~

「そらも 会いたかったよ~」

と しばし 遠距離恋愛の恋人 再会の図emoji

しっかり 手をつないで
歌いながら ゲラゲラ笑って
家に帰って ごはんも食べて・・・

と・・・

テレビを見ているそらの後ろから
そらの頭の1点を指さして
娘が私を手まねきする

なに?

「これ見て」

指さすそこに
かわいい円形脱毛!

ストレスあるんだね

「そうみたい・・・」

幼稚園?
それともこっち?

「うん こっちだと思うけどね」

と おりこうによく眠っているここちゃんを指さす

3歳で 円形脱毛か~
気をつかってるんだね~ そら

35年も前のこと
娘たちがまだ保育園に通ってる頃
私は近くの診療所で働いていて
皮膚科の外来に 円形脱毛症の女の子が来た

まだ小学校の3~4年生くらいだった

10円玉くらいの円形脱毛が
頭じゅうに無数に連結していて
円形と円形の間のわずかな髪の毛が
白い頭にぴらぴらとぶらさがっているような重症だった

それでもその子は なんでもないように
待合室でも 診療室でも にこにこしていた

薬がないので来週またきてね というと
にっこり「はい」と言って
翌週また ニコニコ顔でやってきた

お父さんは
「この子はいつも明るいんですよ」と言っていた

うれしいはずはないのに
あんなふうに かなしかったり つらかったりするときに
顔はがまんして にこにこできても 
身体は ちゃんと正直に 「たえられないよ」 って
言ってるなぁ って思ってみていた

あれほどになるのに
どれほどのがまんをしたのだろうか・・・

子どもも 円形脱毛する・・・



そのあと 幼稚園のお友達が迎えに来て
娘がそらをつれて 近くの遊び場に 
出かけていった

しゃぼんだまや ボールなど
遊び道具をいっぱいもって

私は こことお留守番

そらは 妹を可愛がるお兄ちゃんだけど
たまには お兄ちゃんじゃなくて
前みたいに あ~たんをひとりじめしたいよね

遊び疲れてそらが帰ってきた時
ちょうど ここちゃんが起きて
そらが走って玄関をあけて飛び込んで来たのに
ばあばは ここちゃんを抱っこしてた

そらは ちょっとさびしそうな顔をしたけれど
ここちゃんのホッペにキスをした

ここちゃんにおっぱいを飲ませて
ゲップさせようと抱っこしていたあーたんに
少しねむくなったそらが
「カエルさんで おはなしして」と 
ぬいぐるみのカエルさんを持ってきて おねだり

小さなカエルさんが そらに会いたくて旅をしているお話しで
ようやく山の上から そらを発見するくだり・・・

「あ!そらくんだ! そらく~ん」

それに応えて そらが カエルさんに 手をふる・・
カエルさんも そらに手をふる・・・

そらが 叫ぶ

「さみしかったよ~」

あれ さっき聞いたセリフ・・・

(わたしも カエルといっしょ?)

まあそれは 考えないことにして
きょうは そらの口から
2回も「さみしかったよ」を聞いたことを考えよう

娘は娘で
私が(脱毛ならぬ)脱帽するくらいに
そらを中心にして生活しているけれど
それでもいかにせん 身一つで 
どちらにも100%の愛を注げないことを気にしていた

はじめて子どもを持った時と
上の子がいて 次にまた子どもを持った時では
親の中身も質も役目もみんな違うから
そのつど違う親として生まれるのではないかと私は思っている 

一番上の子と同い年の自分と
二番目の子と同い年の自分と
三番目の子と同い年の自分は
みんな違う自分だから

いつも 生まれたばかりの親だから
慣れるということなしに 
いつも なにもかもが新しい挑戦

そらに気を使いながら ここと接しているのを知っているから
それでも そらが円形脱毛するのを
むすめは きっとやるせない気持ちで見ているのだろうなぁと思う

娘のお腹に ここちゃんがいる頃も
そらはチック症になって 
しばらく目をしぱしぱしていたよね

そらは やさしくて 気をつかう子なんだね

さみしいよ~って 言いたかったんだね

だから ひともさびしくさせたくないんだね


その分 だれかに会った時 うんとうれしくて

しあわせもいっぱい感じられる子だよ
 

旅先に電話をくれたそらに
ばあばはそらが 大好きよ!と言ったら

何度も 何度も
「そらが好き?大好き?そうなんだ~♪」
と うれしそうに何度も言ってたね



子どもも 気をつかっています
子どもにも 愛されたい欲求と 愛したい欲求があります


守ってくれる安全な親のひざから離れる時

子どもにも
葛藤する人間関係があります


子どもは 円形脱毛もします


  Check

東京にいた私に
娘からメールがきた

そらが とびひになった と

あらまぁ~(・o・)
なつかしいひびき~・・・

とびひって まだあるんだ~
何十年たっても 
子どもも 孫も
おんなじ道を歩くのね~

それがなんだか ホッとするような
ふしぎな気持ち・・・

とびひのワクチンとか 予防注射だとか出来ていなくて
なんだか よかったな~ なんて・・・


わたしの子供時代は
いろんな汚物も流れてくる川で 夏ははだかで泳ぎ
なにしろその川で 指に塩つけて歯も磨いてた

田んぼのあぜや 山の中で
食べられる葉っぱや 花や 茎や 根っこを
そのまんま食べてたし
冬は鼻水たらして はだしで遊んでた

ノミやシラミや 回虫 サナダムシ・・・
わ~ヤダヤダ!だけど
アレルギーの子どもはいなかったように思う

アトピーの子どもも
食べ物アレルギーも
ましてや太陽アレルギーなんて
2000人ものマンモス校にいたけど
聞いたこともなかった

私たちの年代で 回虫駆除のカイニンソウや
予防注射や ワクチンが始まり
回虫 ぎょう虫 サナダムシはいなくなった

娘の代で 予防注射 二代目
そのころから ちらほらアトピーなど聞こえ始め

今 三代目の孫の代では 
給食で命を落とす子どもさえ出てきた

子どもが お日さまの下で遊ぶことや 
走ることや 食べることや 
息をすることまで不安で制限があるなんて・・・

これ 変だよね

なんだか なにかを防ごうとして違うものを身体にいれると
もともとのバランスがくずれるのかな
次の代 その次の代に 拒絶反応のように
だんだん重篤な病気がでてくるような気がするのは
わたしだけかしら?


だから そらが むかしと同じ 
とびひになったと聞いた時
なんだかうれしいみたいな ホッとしたような

とびひよ よく残っていてくれたね!みたいな
へんな気持ちになったのでした
 

  Check

夜遅く 疲れて帰ってきた父たんに
まだ起きていたそらが怒られた話を聞いて
胸が痛んだ

いつも そらのことが大好きで
よく遊んでくれる父たんなのに
よっぽど疲れていたんだね

かわいそうだったね そら
ばあばもそんなふうに子どもを怒ったこと
いっぱいあるのよ

ごめんね そら

大人に なにをいわれても
そらはまだ言い訳もできないから

あ~たんがよそってくれたご飯を
べそをかきながら がんばって食べたんだね

ばあばも 子どもの時
かなしいご飯を食べたことがいっぱいあるから
気持ち よ~くわかるよ

大人になったら 忙しくなって 疲れちゃって
子どもの時の気持ち 忘れちゃって 

言い分も 理由も きく余裕がなくて
気がつくと ずいぶん理不尽なことをしてきた

どんなに小さくても
ちゃんと理由はあるのにね

ごめんね そら

そらには いつも
あ~たんがいるよ

そらびいきのばあばが つい
「(父たんに)なにか言ってあげなかったの?」 と 聞いたら
あ~たんは こう言ったよ

「言うのは今じゃないな と思って」 って

「相手が怒ってる時に言ってもね」 って笑ったよ


相手と一緒に怒らない・・・

ちょっとばあばは うれしかったよ
さすが!と ほめてしまった

父たんと あ~たんがけんかをしたら
そらがいちばん悲しいもんね
きっと 泣いちゃうよね



きょう 帰りがけ
バイバイのタッチと ぎゅうっとハグもして

障子をしめてから やぶれたところから手を出して
もう一度タッチしたとき

はじめて そらが 
「さようなら」 と言った

心に響いて
ばあばはなんだか・・・ 悲しかった (T_T)

「バイバイ」は いいけど
「さようなら」は 涙がでるのはなぜかなぁ


会うたびに 少しずつ大人になっている そら

そらが 父たんの気持ちがわかる日も
きっと来るよ


みんな そらのために
がんばっているよ

みんな そらが
大好きだよ








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