(「伸びる」)
そらが ねがえりしたとき
ほんとうに うれしかった
よこむきや うつぶせになれなくて
ずっとあおむけにねているのは つらいよね
そらが おすわりできるようになったとき
ほんとうに うれしかった
ねたきりで したからみあげるだけよりも
ちょっとだけ せかいがひろがったね
そらが りょうてをさしだすようになったとき
ほんとうに うれしかった
「おこして」 「すわらせて」 「だっこして」
いえないけれど つたえられるようになった!
そらが ハイハイしはじめたとき
ほんとうに うれしかった
ねがえりしたいときに ねがえりできて
ねるのにあきたら じぶんでおきて
ほしいものを てをのばしてとって
ひとりで いどうできるって・・・
じぶんでえらんで じぶんでたいけんして
いたかったり にがかったり
あじわうために うまれてきたんだもの
そら よかったねぇ
ここまできたよ
スプーンをつかいだして コップをもち
そのうち だんだんはがはえてきて かめるようになる
おむつがとれて パンツになって
ひとりでトイレにいくようになる
あさ めがさめてから よる ねるときまで
ぜんぶ ひとりでできるのよ すごいでしょ!
ますますひろがって じりつしていく そらのせかい!!・・・
・・・・あ!
ひとは いつかその道を
フィルムの巻き戻しみたいに 戻っていくんだなぁ
と ポカンと おもった
トイレがひとりでできなくなって
歯がぬけて 噛めなくなって
すわっているのが せいいっぱいになって
話しにくくなったり 記憶もうすれて
寝たきりになる・・・のは
お! まるで あかちゃんへ逆戻り!
そっか
あかちゃんに戻って
それから
生まれる前の世界に 戻っていくんだね
それでいいんだね
順ぐりの くりかえしの 巻き戻し
みんな こうしてお世話になって
みんな こうしてお世話して
みんな こうして またお世話になる
お世話になる方が 多いんだなぁ
お世話してるときは あたまがはっきりしている時代
お世話になってるときは あんまりおぼえてない時代
歳をとると忘れっぽくなるのは
お世話になるのを おぼえていたくないからかな
おぼえてないけど みんなお世話になって大きくなった
おっぱいあげて 10kg以上もやせた娘を見ていて
わたしもこのごろ よく 母を思い出すようになりました